2014年2月21日金曜日

経常収支のマイナス化と国債ファイナンス


<1990 年代以降-2000年代の半ば>

民間純貯蓄は、「財政赤字」、「民間純投資」、「経常黒字」に向っていた。
すなわち、「財政赤字」のファイナンスとして国債が買われ、「民間純投資」がなされ、「経常収支」は海外での純資産となっていた。

表現をすっきりさせると、民間の富は、国債、民間純投資、海外での資産になっていた。


<2009年度>

「民間純投資」はマイナスに転じてしまった。
すなわち、国内の資本ストックは、新規で蓄積よりも取り崩し(廃棄等)などのほうが多い局面になったのである。

これは上記の表現にあわせると、こうなる。

民間の富は、国債と海外での資産になっていったのである。

強調しておくが、日本国内での生産の拡大を意図する動きが弱くなったのである。

経済活動において、国内での生産活動に向うべき資金を抑え、国債のファイナンスに資金を振り向けたと解釈することもできよう。



<経常収支マイナスの時代>

昨今、経常収支の赤字への注目が高まっている。

経常収支の赤字とはすなわち、民間純貯蓄が減少してくることを意味する。

これまでは、民間純貯蓄がプラスだったから、国債のファイナンスは可能であった。

今後、経常収支が赤字になっていってしまうのであれば、これまで以上に、国内の資本蓄積を抑え、国債のファイナンスに資金を回していくことが求められる。

これは、日本の生産力が落ちていくことを意味する。


仮に、日本が国内の資本蓄積も進めていくのであれば、国債のファイナンスが可能になるのは、従前以上に魅力的な利回りが提供されるときである。



いまは、日銀の異次元の金融緩和の効果により、日本の国債は低利回りで抑えられている。

しかし、これは諸刃の剣だ。

銀行は融資する先がないから、この低い利回りの国債に甘んじている。

仮に、生産活動が活発になり、資本を蓄積するようになってくると、企業の資金ニーズが高まり、銀行融資が伸びてくる。

そなれば、銀行はこの低い利回りでの国債を購入するインセンティブは落ちてくる。




経常収支のマイナス化は、国債の低位安定でのファイナンスに、じわりとストレスを与えてきていると言えよう。





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中国では、TD-LTEモデルが、もうじき大量に発売されるだろう

旧正月前後から中国スマホメーカーが、部品の調達を加速させているらしい。

中国のOEMがTD-LTEに対応した薄型モデルを本格的に生産するという観測が強まっている。

どうやら、2 月末から3 月に始まるようだ。

おそらく、Qualcommを使ったTD-LTE モデルが、中国メーカーから大量に発売されることになるだろう。

iPhone次第で、日本のモバイルの部品メーカーの業績は右往左往しがちだが、目先は、この中国需要でなんとかなりそうだ。

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中国のモバイル業界では5Gの開発へ。4Gの10倍の速さ??


一応、現状を確認しておくと、中国では数ヶ月前に 4G の敷設が始まったばかり。

それにかかわらず、中国科学技術部は国家長期研究の一つとして、5Gの研究プログラムを立ち上げたそうだ。


なんと、予算は1.6 億元(約2,600 万 US ドル)。
現在の為替だと日本円で26億円相当。



参加者はこんな顔ぶれ。

Huawei Technology (華為技術)

ZTE Corporation (ZTE コーポレーション、中興通訊)

Datang Telecom (大唐電信)

清華大学

北京郵電大学




4Gと比較して、周波数で10倍の効率性を目指すらしい

中国という国は、他の国で研究開発されたものを利用するイメージがあるが、今回の本当の狙いは何なのだろうか。

現状は、まだ始まったばかりということもあり、よくわからないのだが、圧倒的な人口を背景にゲームの仕組みがひっくりかえるのが中国だ


実際、中国では、現状、スマホが農村地域まで普及しつつある。

この背景にあるのは、モバイルの部品の価格が急激に下がっていることだ。

中国でのモバイル部品の急落が、日本株に対しても、様々な影響をもたらしつつある

引き続き、資産運用の観点からも、中国のモバイル事情はチェックを続けたほうがいい。





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2014年2月13日木曜日

株式投資の対象としてKDDIを考える


KDDIへの投資を考えるときの論点は以下だろう。

1.配当

2.自社株買

3.ARPU反転の公約

4.営業費用の使い方




今回の発表を順番にチェックしてみよう。

1.配当 → 10円の増配。増配自体は期待/予想されていたので、最低限の水準といえよう。

2.自社株買 → 今回は発表なし。ネガティブ評価。

3.ARPU反転の公約 → これは達成できそう。ポジティブ評価。

4.営業費用の使い方 → どうやら顧客獲得単価をあげてくる模様。
                短期的な株価にはネガティブ評価。



ということで、1月30日の発表以降、KDDIの株価は軟調推移。


KDDIは2015年3月期も増益が期待できる企業だが、どうも株式市場との対話が上手くない。


経営陣が、株式市場との対話の重要性を理解すれば、KDDIは高い配当利回り狙い以上のポテンシャルがあるはずなのだが、、、、


引き続き、潮目が変わるタイミングをウォッチすることにしよう。








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強い決算を発表したソフトバンク株がなぜ暴落したのか


ソフトバンクは2月12日に2013年4~12月期決算を発表。

営業収益:4兆5617億円、前年同期比94%増
営業利益:9242億円、同46%増
純利益:4882億円、同58%増


大幅な増収増益で、過去最高を更新している。

一時益も含まれているが、内容を確認すると、それらの要因を除いても増収増益であることがわかる。

また、一時益の調整を考えれば、2015年3月期には、さらに2500億円程度の増益をすると宣言した。


実際、海外時間での外国人投資家の評価は高かった。


ところが、本日13日のソフトバンク株価は、前日比-276円、▲3.5%もの暴落となった。


どうやら、このブログにもその要因を探りにきている方がいらっしゃる様子なので、少し解説しておこう。





本日の株価の主要因は、アリババの株の評価への懸念だ。



中国に、オンラインゲームの巨人網絡集団(ジャイアント)という企業がある。

ここが、アリババの保有株を約1.99億ドルでファンドに売却すると発表したのだ。

ジャイアントの保有比率が不透明ではあるものの、2011年に投資したままであると仮定すると、ジャイアントの今回の売却のディールによるアリババの企業価値は約1280億ドルとなる。


現在、市場ではアリババの評価額が入り乱れているが、約1400億~1500億ドルあたりとみなす向きが多い。

当然、現在のソフトバンクの株価には、アリババの企業価値が反映されている。

従って、ジャイアントのディールの評価額がもし妥当であるとするならば、いままでのソフトバンクの株価は、アリババの分の企業価値を「織り込みすぎ」ということにある。


つまり、アリババの企業価値を約1400億~1500億ドルから、1280億ドルに評価を引き下げるのであれば、その分、ソフトバンクの株価もさげなくてはいけない、というロジックだ。


逆に言うと、アリババの企業価値が従前どおり約1400億~1500億ドルであるならば、本日のソフトバンクの下げは「市場の誤解」だったということになる。


<関連記事>

最近、軟調なソフトバンク株を考える ― 中国アリババの評価額、アナリストの分析は平均1530億ドル!(2014年2月5日付)

世界最大級のEコマース、Alibaba(アリババ)の業績をチェック!(2014年1月29日付)

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2014年2月5日水曜日

最近、軟調なソフトバンク株を考える ― 中国アリババの評価額、アナリストの分析は平均1530億ドル!


ブルームバーグにこんな記事が流れている。

「Alibaba Valuation Avg. Est. $153b After Yahoo Earnings」
(現時点ではまだネットの記事にはなっていない模様)


参考までに引用しておこう。以下のような評価になっているそうだ。

Valuations by brokerage with date of last mention:
• Evercore: Cut 5% to $150b (Jan. 29)
• FBN: Cut to $145b from $160b (Jan. 28)
• Piper: $125b valuation (Jan. 28)
• Bernstein: ~$190b (Jan. 29)
• Cantor: YHOO valuation assumes $152.8b (Jan. 29)
• Goldman: $150b (Jan. 29)
• RBC: $150b (Confirmed Feb. 3)
• Pivotal $135b (Jan. 29)
• Susquehanna ~$160b (Jan. 29)
• Macquarie: Valuation may be $150b-$200b (Jan. 29)
***引用ここまで***


やはり、額としては凄まじく大きい。

これらのアリババの評価額よりも大きな時価総額の日本企業は、トヨタ自動車しかない、という規模感だ

いま一度、確認しておくが、ソフトバンクは、このアリババに36.7%出資している。

このとてつもないアリババの評価額の36.7%が、ソフトバンクの資産なのだ。



が、どうやら一部のアナリストが評価額を「減額」していることが、ここもとのソフトバンクの株にネガティブ材料のひとつになっているようだ。
 
 *その他は、Tモバイルに関する不透明感、財務悪化懸念など
   これらの材料に関しては、また別途、検証することにしよう



アリババの未来のポテンシャルを勘案すると、最近のアリババの評価額の減額修正でソフトバンク株が値下がりするのであれば、これは「市場の誤解」だ。

チャンスだろう




<関連記事>

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流通総額からアリババの時価総額を考える(2013年12月11日付)



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