<1990 年代以降-2000年代の半ば>
民間純貯蓄は、「財政赤字」、「民間純投資」、「経常黒字」に向っていた。
すなわち、「財政赤字」のファイナンスとして国債が買われ、「民間純投資」がなされ、「経常収支」は海外での純資産となっていた。
表現をすっきりさせると、民間の富は、国債、民間純投資、海外での資産になっていた。
<2009年度>
「民間純投資」はマイナスに転じてしまった。
すなわち、国内の資本ストックは、新規で蓄積よりも取り崩し(廃棄等)などのほうが多い局面になったのである。
これは上記の表現にあわせると、こうなる。
民間の富は、国債と海外での資産になっていったのである。
強調しておくが、日本国内での生産の拡大を意図する動きが弱くなったのである。
経済活動において、国内での生産活動に向うべき資金を抑え、国債のファイナンスに資金を振り向けたと解釈することもできよう。
<経常収支マイナスの時代>
昨今、経常収支の赤字への注目が高まっている。
経常収支の赤字とはすなわち、民間純貯蓄が減少してくることを意味する。
これまでは、民間純貯蓄がプラスだったから、国債のファイナンスは可能であった。
今後、経常収支が赤字になっていってしまうのであれば、これまで以上に、国内の資本蓄積を抑え、国債のファイナンスに資金を回していくことが求められる。
これは、日本の生産力が落ちていくことを意味する。
仮に、日本が国内の資本蓄積も進めていくのであれば、国債のファイナンスが可能になるのは、従前以上に魅力的な利回りが提供されるときである。
いまは、日銀の異次元の金融緩和の効果により、日本の国債は低利回りで抑えられている。
しかし、これは諸刃の剣だ。
銀行は融資する先がないから、この低い利回りの国債に甘んじている。
仮に、生産活動が活発になり、資本を蓄積するようになってくると、企業の資金ニーズが高まり、銀行融資が伸びてくる。
そなれば、銀行はこの低い利回りでの国債を購入するインセンティブは落ちてくる。
経常収支のマイナス化は、国債の低位安定でのファイナンスに、じわりとストレスを与えてきていると言えよう。
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