2013年7月30日火曜日

アベノミクスがその魅力を失い始めた??


天下のウォール・ストリート・ジャーナルに、こんな記事がでている。

Abenomics starts Losing its Allure

このAllureとは、魅力、魅惑という意味だ。


内容的にはこんな感じ。

・日本政府によるミラクル的な改善策は、ワークしていないかも知れない。

・そして投資家も一段とナーバスになって来ている。

・日経が月曜日3.3%も下落した事、そして円高が更に進んだ事がアベノミックスに対してのムードを表している。

・一旦は日本経済の救済者と見られていたが、期待に沿っていないかも知れない。

・先週金曜日、6 月での消費者物価が約1 年ぶり、かつ2008 年11 月以来の上昇幅である
0.4%増となった。しかし、殆どは円安による輸入エネルギー関係の上昇であった。



ふむ。

今日の外資系証券経由の注文状況は、20万株の売り越し観測という話だが、この記事が影響しているのかもしれない。

ただ、今週はFOMCやら雇用統計で緊張感が高いが、そろそろ夏季休暇に入るファンドマネージャーも多い模様。

特に海外のファンドマネージャーにとっては、休み入りする前にポジションを落としたくなるだろうし、この2~3日の日本株の大きな下げはそんな事情も関係していそうだ。



一方、日本サイドからみれば、この数日で日本企業の決算発表が続く。

外国人の新聞や休暇の事情で安くなっているのだから、業績の裏付けのある銘柄を発掘して購入するチャンスだろう。

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2013年7月25日木曜日

中国経済の成長率の目線はどこか?クラッシュするのか?


中国の株が激しい値動きをみせているが、これと最近の中国の経済成長率の目線を確認してみよう。






①:7%

5月27日、李克強首相が、2020年までに1人当たりGDPを倍増させる目標を達成するためには年率7%の経済成長が必要だとの考えを提示。

これまで、8%の目線に対して、ただ、しばらく8%を下振れるだろうとのレンジ感に対し、7%という厳しい目線が提示された。

上図の上海総合をチェックしてみると、このあと、売りが売りを呼ぶ展開になっていることが確認できる。


②:7.5%

6月29日の新華社通信の報道で明らかになったのだが、李克強首相は6月28日、国内外の有識者らと面会した際に「中国は今年の経済目標(7.5%成長)を達成する条件と能力がある」との見方を提示したそうだ。

これで、①のショックの前に目線が修正される。

上図の上海総合でも、下げ続ける局面からは脱皮できたようだ。


③:7.5%以上?or 7.5%

解釈が難しいが、李克強首相は経済専門家らとの意見交換会で、雇用確保のため、今年の経済成長率が7.5%を割り込んではならないと述べた、と7月23日の新京報で報じられている。

7.5%かもしれないが、少なくとも、言葉のトーンとしては②よりも強いとみてよいのではないか。

これが報じられた7月23日の上海総合は一時2%を超える上昇幅をみせる局面もあった。


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中国はこれまで前政権の負の遺産(例えば、中国のシャドーバンキング)を退治するべく、かなり厳しい経済運営の目線を有してきたと解釈できる。


実際、中国は意図的にバブル退治をしている。

一方で、本稿でみてきたように、李克強首相の発言を丁寧に追っていくと、これ以上負荷をかけてはいけないという目線も定まってきたとみていいのではないか。




中国経済が引き続き、世界経済の大きなリスク要因であることに変わりはない。長期的には警戒してウォッチする必要がある。

しかし、巷で言われているような、この夏にも中国発のクラッシュが起こるというシナリオは避けられるとみている。


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2013年7月16日火曜日

スワップションから占う国債の持続可能性

この図は日本の国債の金利(10年もの)と、スワップションの推移だ。





一般的に、金融機関は金利上昇に伴うVaR(バリューアットリスク)を抑制しようとする。

ひとつめの方法は、国債のポジションそのものを減らすこと。

ふたつめの方法は、スワップションを組むことだ。つまり、ボラティリティをヘッジ(ボラを買う)するわけだ。

この図の1や2の局面のように、金利が短期間で上昇するときには、スワップションの水準が上昇することが理解できる。

つまり、VaRをコントロールするためのオペレーションがしっかりと入っていると解釈できる。


一方で、このふたつめの方法だとセータのために、損益が低下する。

従って、この方法はなるべく短期間に留めて、ひとつめの方法、つまり、そもそも論として、ポジションを減らすことが、金融機関の経営としては選択される。


ここもと(3の局面)、金利はレンジ横ばい推移していることもあり(日本国債は安定したのか?)、スワップションの水準は下がっている。


これをどう解釈するか?

その1.当面、金利上昇はこないと多くの金融機関が考えている。従って、スワップションを解約したため、スワップションの水準は下がっている。

その2.金利上昇リスクが危なっかしいので、そもそもの国債のポジションを減らした。従って、スワップションも解約できた。


その1でもその2でも、スワップションの水準は下がりうる。

ただ、2であるならば、要注意だ。

異次元の金融緩和が国債市場から金融機関の資金を追い出しているという意味だからだ。

当初はポートフォリオリバランスを期待するなどと気楽に言っていたようだが、

国債市場から資金が逃げ始めると、日銀が買い向かう程度では収拾できない。




莫大な政府債務は、圧倒的な流動性を誇る国債市場があってこそ、維持できている。

最近では、国債市場の流動性の低下が懸念されている。

だが、しかし、売買が減っているだけではなく、金融機関のポジション縮小まで誘発しているのであれば、事態は一般的な理解以上に深刻だ。



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2013年7月12日金曜日

金融政策と甘い誘惑


昨晩の米国株は強かった。

ダウとS&Pは史上最高値更新、ナスダックは年初来高値を更新だ。

その背景にはバーナンキFRB議長の「自動的に利上げするわけではない」との発言がある。



5月にバーナンキ議長が金融緩和の縮小を示唆して以降、マネーフローが変わり、新興国からの資金の巻き戻し、米国債の下落などが起こっていた。

それらに対して、配慮したのが上記のバーナンキ議長の意図だと解釈できよう。


5月以降の動きからわかるように、米国の金融緩和の縮小は、本質的には米国経済の復活ながらも、局所的には大きな痛みが発生する。

その痛みは、緩和を縮小すべきタイミングを後ずれさせる誘惑となる。

米国は果たして、適切なタイミングで緩和を縮小させることができるのだろうか。

緩和を縮小できなければ、その時点では株式は上昇するだろう。

多くの人が喜ぶことになる。

しかし、その副作用は大きい。




金融緩和は緩和を拡大することよりも、緩和の縮小、つまり、その出口が難しい。

みな、足元の甘い誘惑に負けてしまうからだ。

さらには、いつかくるその先の痛みはみたくない。

いつまでも緩和してほしいとの声が強まるからだ。





ところで、異次元の金融緩和をしている国がある。

異次元にモルヒネを注入してしまったら、普通の精神力ではその誘惑に勝てないだろう。

異次元の金融緩和の誘惑がどのような結末を迎えるのか?




やはり、一定程度の円売り/ドル買いのポジションを持っていたいものだ。

これは目先の相場で儲けるためというよりも、将来のリスクに備えるためだ。






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2013年7月11日木曜日

金融政策で失業率は改善するのか?

FOMCの議事録によれば、多くのメンバーが金融緩和の縮小前に労働市場の見通しにさらなる改善が必要だと考えているそうだ。


ただし、これってよくよく場合分けして考える必要があるだろう。


1.景気が悪くて、その結果として失業率が悪いのであれば、金融政策が改善できることもある。

2.ただし、そもそも企業の求める人材(スキル)と現在失業している人のスキルが異なる場合、つまり、ミスマッチが存在する場合、いくら金融政策を緩和させても、そのミスマッチは解消しない。


もし2の状態であるならば、失業率が改善するまで金融緩和を拡大させるとしたら、論理的な結論として、資産に対してマネーの価値が暴落するだろう。つまり、資産バブルだ。



ほどほどの成長率であるにもかかわらず、アメリカの株が強いのは、2だということではないか?


つまり、失業率には対して効果がない政策を打ち続け、その結果として、ある意味、副作用が拡大しているということなのだろう。


ただ、10日のバーナンキ議長は現状の失業率では緩和の縮小は難しいとの見方を提示したので、1.の立場なのだろう。


副作用が大きくならないことを祈るばかりだ。



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2013年7月9日火曜日

日本国債は安定したのか?


これは日本国債の10年ものの金利の推移だ。




足元では狭いレンジの中で推移している。

4月4日に発表された異次元の金融緩和以降、日本国債の乱高下が随分と心配されたが、日本国債は安定したといえるのだろうか?



実際には、かなり微妙だ。

日本の場合、月に何度も国債が発行される。

通常の世界なら、発行、つまり、供給増なので、それは値下がり圧力だ。

このグラフなら、金利が上昇する方向に圧力が働く。



一方で、異次元の金融緩和のもとでは、日銀がせっせとオペで国債を購入してくれる。


それを踏まえて、金融機関は、入札で国債を購入し、オペでそれを日銀に売却しているのだ。

短期間保有することで、売却益を狙っていける。

このような動きを多くの金融機関がするので、結果として、金利のレンジが狭くなってしまっている。

健全な恰好で、日本国債が安定推移しているわけではない。




もともと日本の国債市場は売買量が大きく、流動性が高いことが魅力であったが、いまや、最終的なリスクを日銀に移転するだけで、お小遣い稼ぎができる場になってしまっている。



また、違った角度からみると、国債を日銀が直接買っている構図によく似ている。


中央銀行による国債の直接引き受けを禁じるのは、財政の規律を保ち、通貨の価値を守るための叡智だ。




いつの日か、国債だらけになった日銀のバランスシートの健全性が疑われることになるだろう。

それは円という通貨の信認が揺らぐことを意味する。


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債券王のファンドからも1兆円以上の資金流出


債券王ビル・グロースのファンドからも資金が逃げ始めているようだ。



ただ、これも、FRBによる金融緩和の縮小の中で自然なこと。

この数年間、金融緩和で債券が値上がりしていたわけであり、

金融緩和の縮小を織り込む中で、そのかさ上げ分が剥落するだろう。

そう見通すことができる投資家の資金がファンドから流出しているという現象だ。





金利がある程度、上昇すれば、また債券投資も魅力がでてくる。

そのときにエントリーできるように、いまはいったん自分のポートフォリオから債券の割合を下げておくべきだ。



日本の投資家は外債のファンドが好きだが、よく考えたほうがいい。

新興国の債券ファンド、これはいまは全然魅力がない。

米国債ファンド。これはデュレーションをチェックしよう。デュレーションが長いものは、金融緩和の縮小の中で、キャピタルがやられていくだろう。

米国のハイイールドも人気だが、これは過去数年のパフォーマンスはもう期待できない。
金利上昇とクレジットスプレッドのワイドニングの悪影響が効いてくるはずだ。

いまは債券系の投資は、デュレーションの短いドル建て資産で十分だと思う。

むしろ、金利やクレジットのリスクを減らす分、ドルのリスクを増しておくほうがメリットがあるだろう。


2013年7月8日月曜日

いまの相場のテーマは何か?


日経平均が1万4000円台になり、ドル円は100円台を回復。

レベル的には5月上旬まで戻している。

日本の目からみると、また相場の雰囲気がよくなっているようにみえる。




一方で、米国債は売られ、新興国向けのファンドの解約は続いている。

つまり、FRBによる金融緩和の縮小を織り込むマネーフローはいよいよ本格化しているのだ。

この点は油断してはいけない。

ここは今後、さらに加速するだろう。

場合によっては、新興国でのマネーマーケットのクラッシュもあるかもしれないくらい警戒しておいたほうがいい。




5月22日、23日以降の相場の激変は、このFRBによる金融緩和の縮小を織り込んで始まったもの。

しかし、一方で、日本の株は結構、強い。



これをどう解釈するか?

第1に、日銀の異次元の金融政策。

第2に、参院選での自民圧勝を織り込む買い。

第3に、円安要因を含めた企業の業績回復を反映したもの。

第4に、質の悪いロングが5月以降の調整で投げられ、腰の入った買いが入ってきている。


これら4つの要因が日本株のサポートになっているのではないだろうか。



今月の後半あたりから、日本の企業の第1四半期の業績発表が集中する。

第3の要因(企業業績)を確認しながら、第4の腰の入った買いが太くなってくるのではないだろうか。



よく金融相場なのか、業績相場なのか、という議論がなされる。

ただ、日本はじゃぶじゃぶの金融緩和状態の中での、業績の回復という状況になりつつある。

FRBの金融緩和縮小の中で、その分のバリエーション調整がなされるだろうが(金融緩和時代の運用の終わりを意識しよう)
、厳しい環境の中で、相対的に日本株はアウトパフォームする可能性が高い。



あとは中国のリスクの状況を勘案しながら、ポジションの量をどうコントロールするかがポイントになるのではないか。


ドル建て資産と日本株をメインに運用しながら、中国のリスクをウォッチしていくというイメージだ。

2013年7月3日水曜日

ポルトガルの国債が溶けはじめた。。。


政局の混迷が懸念されるポルトガル。

この1時間で国債が単価で1割以上下落中。。。







いまロンドン・タイムで9時まえなので、とりあえず、朝一で売っている感じか。。

ただでさえ、FRBやら中国やら不安定なのに、ここに欧州債務危機が再燃となると、マズイですな。。。

2013年7月2日火曜日

HEREAFTER ヒアアフター


英語で"hereafter"とは、名詞だと「来世」という意味だという。

一方、"here"には、なんと「この世で」という副詞の意味があるらしい。

原題は前者の"hereafter"なのだが、この映画のメッセージは"here(この世で)のこれから"だと感じる。

幼い頃から霊能力を持つジョージ。

臨死体験をし、その後の仕事で悩むジャーナリストのマリー。

双子の兄を失った少年マーカス。


それぞれがこの世で深い悲しみの中にいるものの、"これから"を見出すストーリー。


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