2013年7月16日火曜日

スワップションから占う国債の持続可能性

この図は日本の国債の金利(10年もの)と、スワップションの推移だ。





一般的に、金融機関は金利上昇に伴うVaR(バリューアットリスク)を抑制しようとする。

ひとつめの方法は、国債のポジションそのものを減らすこと。

ふたつめの方法は、スワップションを組むことだ。つまり、ボラティリティをヘッジ(ボラを買う)するわけだ。

この図の1や2の局面のように、金利が短期間で上昇するときには、スワップションの水準が上昇することが理解できる。

つまり、VaRをコントロールするためのオペレーションがしっかりと入っていると解釈できる。


一方で、このふたつめの方法だとセータのために、損益が低下する。

従って、この方法はなるべく短期間に留めて、ひとつめの方法、つまり、そもそも論として、ポジションを減らすことが、金融機関の経営としては選択される。


ここもと(3の局面)、金利はレンジ横ばい推移していることもあり(日本国債は安定したのか?)、スワップションの水準は下がっている。


これをどう解釈するか?

その1.当面、金利上昇はこないと多くの金融機関が考えている。従って、スワップションを解約したため、スワップションの水準は下がっている。

その2.金利上昇リスクが危なっかしいので、そもそもの国債のポジションを減らした。従って、スワップションも解約できた。


その1でもその2でも、スワップションの水準は下がりうる。

ただ、2であるならば、要注意だ。

異次元の金融緩和が国債市場から金融機関の資金を追い出しているという意味だからだ。

当初はポートフォリオリバランスを期待するなどと気楽に言っていたようだが、

国債市場から資金が逃げ始めると、日銀が買い向かう程度では収拾できない。




莫大な政府債務は、圧倒的な流動性を誇る国債市場があってこそ、維持できている。

最近では、国債市場の流動性の低下が懸念されている。

だが、しかし、売買が減っているだけではなく、金融機関のポジション縮小まで誘発しているのであれば、事態は一般的な理解以上に深刻だ。



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