シリアの内戦で一気に緊張が高まったのが今週の資本市場。
これはどう考えたらいいのか?
報道では、あたかも化学兵器の使用は人道的に問題だと言われているが、本質はそこではない。
ポイントになるのはパワーバランスだ。
シリアのパワーバランス
シリアには約40年も続いた独裁政権がある。
これがアサド政権だ。
アサド家が信仰する宗教がイスラム教の「アラワイト派」。
シリアにおける人口構成では約1割の少数派である「アラワイト派」が、権力の中枢を掌握している構図となっている。
対立するのが「スン二派」。
つまり、シリアでは、人口で多勢の「スン二派」が違う宗教を信仰する権力者に武力攻撃をしているのである。
中東のパワーバランス
シリアの「アラワイト派」はイランと太いパイプがある。
ちなみに、イランでは全人口の3分の2が「シーア派」。
「シーア派」とは、イスラム教全体でみると、「スン二派」とともに二大宗派といわれることが多い。
ただし、二大といっても圧倒的な差があり、「シーア派」はイスラム教徒全体の1割~2割と考えられている。
イスラム教全体でみれば、「スンニ派」が圧倒的な最大勢力である。
なお、イラン、イラク、レバノン、アゼルバイジャン、イエメン、バーレーンに「シーア派」が多いと言われる。
こういう背景のもと、イランは「反スンニ派」という御旗のもとで、シリアの「アラワイト派」と親しいのだと推察される。
シリア内戦に関しては、化学兵器の使用が問題かのように報道されているが、本質はそこではない。
シリアという国の権力の構図が変わることは、イランと太いパイプを持つ政権か否か、という問題に発展するのである。
つまり、中東のパワーバランスに変化を生じさせるかもしれない事態なのだ。
従って、欧米諸国も無視できないのである。
イランは核兵器の開発をしているとの疑惑が根強いのだから。
欧米諸国にしてみれば、シリアに局地的に攻撃することはさほど難しい話ではない。
が、その後のイランの出方、またそれにともないトルコやイラクやイスラエルがどう反応するかが読みづらいので決断しかねているのだろう。
ちなみに、イランの高官は「米国がシリアを攻撃するということは、米国がレッドラインを超えること意味する」と牽制している。
イランが大きく反応し、勢力を拡大させようとするなら、イスラエルは黙っていないだろう。
シリア内戦は、中東のパワーバランスに激震を与え、第4次中東戦争にまで発展しかねないリスクを孕んでいるのである。
アメリカはシリア問題で、イランのことを悩んでいるのである。
高橋和夫
朝日新聞出版 (2013-03-13)
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